この記事は、大学で作業療法を4年間学んだ後、作業療法士として働いている新卒一年目が書いています。友達や知人から、よく「作業療法って何してるの?」と質問を受けるので、作業療法に詳しくない方にも伝わるよう記事に起こしたいと思い投稿しています。作業療法を学んでいる方にとっては、下記の内容は、厳密な言葉の定義等に異議を唱える場合があるかもしれません。専門職ではない方にもできるだけわかりやすく伝わるような言葉を用いた、ということのご理解をいただければ幸いです。
作業療法士の仕事内容って?
作業療法士の仕事内容は、結論からいうと決まったものはなくバラバラです。
僕は、精神科勤務で、レクリエーションや物づくり、面接などを用いた作業療法をしています。ときに1対1で関わりますが、いわゆるメインとなる作業療法の場面は、作業療法士1~2名に対して患者さん5~30名を対象に関わることが多いです。また、僕自身の趣味を活かして、ギター伴奏をしながら患者さんと歌唱することもあります。患者さんの入院生活をよりよくするにはどうしたらいいんだろうか、その先のこれからの生活をよくしていくにはどうしたらいいんだろうか、と考えながら過ごしてます。精神疾患による病的な体験に閉じこもらずに、楽しむこと等の現実的な体験を支援することが役割の一つです。ときに、物事に対する考え方の傾向(クセ)を一緒に話し合ったりもします。物事に対してネガティブに考えすぎてしまうことで精神的な不調をきたす方もいるのです。ですので、話し合いをして考え方の傾向(クセ)を理解していくことも重要な役割です。
一方、知人は、身体障害領域で、脳卒中によって引き起こされた生活の困りごとに対する支援をしているわけです。その障害によって、体が動かしづらくなったり、注意の能力が落ちてしまったりしたことに対して真摯に向き合うのです。生活をよくするために、体を動かす練習をしたり、病前と比べて注意の能力がどの程度落ちてしまったか検査したりすることもあります。そのような関わりも持ちながら、生活の課題と向き合っていくのです。
また、別の知人は、認知症になって生活に支障をきたした方と向き合い、よりよい生活の在り方を模索しているわけです。認知症は今のところ、根本的に治る治療法がありません(※治る認知症もあります)。そんな中で、いい生活ってなんだろう、いい人生ってなんだろう、と考えるわけです。病気によって、どうしても心身がうまく働かなくなったりすることはありますが、その人らしい生活を支援することを作業療法士は諦めません。
いくつか例を挙げてみましたが、楽しむ体験を促したり、身体に直接的にアプローチしたり、認知症になってもその人らしい活動ができることを支援したりと、療法士の特性や職場、領域によって仕事内容は大きく変わるものです。
一方、仕事内容がバラバラといっても作業療法士としての方向性は定まっています。
作業療法士は”作業”の専門家です。
作業はわかりやすく言うと、”生活行為”です。お風呂に入る、家族と雑談する、勉強する、仕事する、、(ほかにもたくさん)、、普段の日常で行っていることを作業(生活行為)と呼びます。
ですので、作業療法士は、人の生活の専門家と捉えるとわかりやすいかもしれません。
作業療法士は、作業(生活行為)の専門家として人々の健康と幸福に寄与するといった方向性のもとで働いています。
誰を対象にしてるの?医学的な側面から
さて、ここからが”誰を対象にしているか”です。
対象を考えるときには、医学的な側面から大きく4つに分けて考えることがあります。それは身体領域、精神領域、発達領域、高齢期領域です。
就職活動のときには、「精神に行こうかな。」「身障(身体障害領域)の脳外科に行こうかな。」「発達に行こうかな。」「高齢者の支援をしていきたいな。」等の話題が繰り広げられるわけです。※ほかの領域や進路もあります。
身体領域は、例として病気を挙げるなら、脳卒中や骨折など。
精神領域は、例として病気を挙げるなら、うつ病や統合失調症など。
発達領域は、例として病気を挙げるなら、自閉症や学習障害など。
高齢期領域は、例として病気を挙げるなら、認知症や廃用症候群など。
イメージしやすそうな例を挙げてみましたが、実際のところは、「骨折に伴う廃用症候群・既往歴に統合失調症」などのように様々な症状が合併している場合もあります。ですので、上記はあくまでも参考程度にしてください。
では、なぜ上記の領域ごとの例を挙げたかといいますと、一般の人にとっては見聞きしたことのある領域だけで作業療法のイメージが既定されていると感じたからです。
骨折の作業療法を見学した人は、「作業療法士は骨折の治療をする人」になるわけですし、
認知症の作業療法を見学した人は、「作業療法士はジジババに優しく接している人」になるのかもしれません。
実際に僕も”作業療法士です”と一般の方に名乗ったとき、「脳卒中の検査をする人だ。」と言われたことがあります。
まとめますと、”作業療法の対象は?”ってきかれたら、広いのです。
例えば、医師を想像するとわかりやすいかもしれません。小児科で働いてる人もいれば眼科や皮膚科で働いている人もいる。手術をしてる人もいれば研究してる人もいる。
このように、作業療法も領域は広いのです。
さらにここ最近では、学校や自動車学校で働く作業療法士もあらわれています。
予防にも作業療法
上記で具体的にイメージしやすい主な対象をお伝えしましたが、予防の領域にも作業療法は参入しています。
不健康になる前に作業(生活)を整える、といった捉え方でよいかもしれません。
つまり、病気とか障害とか関係なく、誰でも対象になり得るといった流れが生まれています。
まとめ
さて、内容がわかりづらかった点もあったかと思いますが、まとめに移らせていただきます。
・作業療法士の仕事内容は、人によってバラバラ
領域や職場、療法士側の特性によって仕事は変わります。
・作業療法士は、作業の専門家
作業(生活行為)の専門家として人々の健康と幸福に寄与します。
・対象はとても広い
いわゆる病気の方も対象ですが、予防の考えから一般の方も対象になり得ます。
おわりに
記事として起こしてみたものの、作業療法ってなかなかわかりづらいですね。
そんなわかりづらい作業療法を少しでも理解していただけたなら、この記事の投稿は成功です。
では、また。