要旨
今回、私は小樽臨床作業療法研究会主催の事例検討会(以下、事例検討会)に、事例提供者として参加した。その経験を振り返り、事例検討会に参加するメリットと、私の事例報告の課題を考察した。事例検討会に参加するメリットは、運営メンバーが生産的なディスカッションを促しながら進行していたため、〈前向きなディスカッションができること〉、〈他領域・他セラピストの視点を知れること〉であった。私の事例報告の課題には〈発表のまとめ方〉、〈質疑応答の技術〉、〈作業的存在としての対象者理解〉が挙げられた。
Key Words:作業療法,小樽,事例検討会,作業的存在
(※質的研究風にカテゴリーにしてみましたが、分析したわけでもなく“結果”→“考察”の流れもありません笑。このカテゴリーの流れでブログを書いてみます。レッツラゴー)
はじめに
事例報告は、作業療法士が臨床を振り返る上で重要であることが広く知られている。事例報告は、所属先によって様々であるが、職場で行われていたり、作業療法学生の実習課題とされることがあり、作業療法に関わる人にとって身近なものの一つである。研究分野においては、新規性を認める“事例研究”の積み重ねが重要とされており、一人~数人の事例を探索的に検討することは有益である。今回は、“臨床の悩みを相談する”目的で事例報告したその経験について振り返る。
小樽臨床作業療法研究会の事例検討会
概要
小樽臨床作業療法研究会では、年に3~4回ほど事例検討会が開催されている。2019年度の第1回目は4月21日(日)に開催され、事例提供者は2名であった。その事例提供者2名の内の1人が筆者の私であり、作業療法士2年目として精神領域から事例提供した。もう1人は、身体領域の作業療法士2年目の方であり、今回は若手の報告の場となった。事例検討会に要した合計時間は2時間程度であり、事例提供者が15分ほど報告し45分程度のディスカッション、これが2セット行われた。その他の情報として、参加費は無料であり、場所は済生会小樽病院である。小樽病院までは、JR小樽築港駅から徒歩12分程度であり、その道のりの風景には坂に立ち並ぶ家々の街並みがあり、なんとも趣がある。
前向きなディスカッションができる
運営メンバーの言葉を正確に記憶できていないが、“前向きに生産的なディスカッションをしましょう”といった言葉が発せられて事例検討会が始まった。また、“事例提供者や質疑をした人の揚げ足をとるようなことはやめましょう”といったグランドルールが設定されており、安心安全に満ちた雰囲気であった。それらの運営メンバーの心遣いもあり、参加者からは「このような関わりをしたらもっと上手くいくのでは?」、「ここの評価をすると、もっと対象者の理解が深まりそう!」といった前向きなアドバイスが多く発せられていた。また、「この関わりが上手くハマってそうでしたね!」といった肯定的な発言も多く、事例提供者による介入の意義が明確化される場面があった。
他領域・他セラピストの視点
参加者の構成は学生、若手では臨床2年目の作業療法士、3年目から10年目、さらには臨床10年を超える作業療法士等々からなり、幅広い経験年数であった。そのため、若手だからこそ感じる素朴な疑問、経験を重ねたからこそ辿り着く臨床推論、それらが領域を超えて語られた。領域を超えるということは大きなメリットであり、普段触れない世界に広く視野を向ける機会となる。職場や同じ領域の中で臨床を振り返る日常に、他領域の視点を交える非日常的経験は、作業療法の世界観を豊かなものにすると思われる。さらには、事例検討会終了後においても、学生が事例提供者に質問している場面があり、場に集って交流できることならではの風景がいくつもあった。
私の事例報告の課題
私の事例報告の課題としては〈発表のまとめ方〉、〈質疑応答の技術〉、〈作業的存在としての対象者理解〉であった。
発表のまとめ方
報告の形式はパワーポイントであったにもかかわらず、私のスライドは情報過多であった。当日、発表しながら、1スライドに情報を盛り込みすぎている実感があった。やはり、広く知られているとおり“1スライドにつき1つの主調”を狙いとすることが有効と思われた。事例提供者が内容を盛り込みすぎるよりも、聴衆の理解に視点を当てて、特に伝えたいことを明確にすることが重要であった。
質疑応答の技術
私が事例提供者側であるときの質疑応答の技術が課題であると思われた。特にそれを感じた場面は、質疑を話してくださっている方の話に割り込んで「あ、それは〇〇〇で、□□□」と“正したい反射”をしてしまったことであった。事例提供者と聴衆では、事例の理解が異なることは当然であるため、最後まで話を聞いて、質疑者が特にどこに興味を持ったのか探るべきであった。相手の質問や疑問の意図を読み取ることは大切であるが、解釈を早めず最後まで内容を聞くべきであった。また、他の聴衆が質疑者の内容を最後まで聞くためにも、質疑途中には割り込まない配慮が必要であった。
作業的存在としての対象者理解
「作業的存在としてどのように捉えていますか?」といった質問を受けた。何と良い質問であろうかと思うと同時に、この質問には上手く答えられなかった。おそらく、作業的存在として感覚レベルの認識があっても言語化することが難しく、加えて私の対象者理解の探究が十分とは言えない状態だったからだろう。
クライエントが自己に価値があると感じる作業は何か。それとどのように結びついているのか。
この探究を続けることが一番の課題かもしれない。
おわりに
小樽臨床作業療法研究会の事例検討会に参加するメリットは〈前向きなディスカッションができること〉、〈他領域・他セラピストの視点を知れること〉であった。私の事例報告の課題は〈発表のまとめ方〉、〈質疑応答の技術〉、〈作業的存在としての対象者理解〉であった。
謝辞
事例提供のお話をくださった小樽臨床作業療法研究会の皆様、ご参加してくださった皆様ありがとうございました。そしてブログを読んでくださったあなた様、ありがとうございます。
本日は、論文の流れ風にブログを書いて見ました。笑
では、また。