こんにちは、金平です。
この記事では、2019年7月19日に開催されたOBP×RecoveryのPREセミナーに関するまとめと感想を示します。
講師はNPO法人いねいぶる理事長の宮崎宏興先生であり、テーマは「地域移行・地域生活支援と精神科作業療法」でした。
まさに地域に作業療法をしている取り組みを聴講できた貴重な講演でした。
特に印象に残った点について示していきます。
狭苦しい価値評価
私たちは、自然と人の価値を評価しているのではないか、それに一喜一憂して生きづらさが生じている側面があるのではないかと述べられていました。
「できる」と「できない」、「自立」と「不自立」、「豊かさ」と「貧しさ」、「包摂」と「排他」...
どっちが優れている・劣っていると考えるのではなく、違う暮らし方をしているといった価値評価軸を持つことが大切であると主張されていました。
「誰でも、自分と同じ部分もあるし違う部分もある」といった価値観が共生社会の実現に有用であると理解できました。
その価値評価軸の上で住民が世代や背景を超えてつながり、孤立を生まない地域社会を構築していくことがより良い社会の実現に結びつくと学びました。
“何が問題か”ではなく“何が必要か”
私たちは、対象者の支援をするとき、“何が問題か”ではなく“何が必要か”を考えることが大切であると教えてくださいました。
専門用語を使うと、“フォアキャスティングアプローチ”ではなく“バックキャスティングアプローチ”で考えること。
現状から何をするかと改善策を考えていく“フォアキャスティングアプローチ”では未来の到達点が見えづらい。
到達点を定めてやり方を工夫していく“バックキャスティングアプローチ”であれば、目標実現のために何ができるか?と未来を見据えながら関わることができる。
実際に、人を支援しようとしたとき、問題点はいくらでも挙げることができ、いつまでも“問題点の抽出→改善”を繰り返すことができる。でも、それでは、今後どうしていくかの未来が見えづらい。
そのため、“〇年後(ヵ月後)に■■■する”と決めるバックキャスティングアプローチが大切であると教えてくださいました。
筆者の私は、トップダウンアプローチとも近接した概念であると理解しました。たしかに、フォアキャスティングアプローチ・ボトムアップアプローチのように問題点を抽出して改善していくことは大切ですが、やろうと思えばいくらでも突き詰めることができ、終わりがありません。私たちの生活の時間は有限ですから、“問題点を1つずつ改善していく”よりも、“目標を決めてやり方を工夫していく”アプローチの方が理にかなっていると改めて考えることができました。
一回性の大切さ
近年は、支援の在り方として持続性の大切さが主張されることが多くあります。医療・福祉の現場で、生活を良い方向性に再構築したならばそれを維持する、維持しなければ本当の効果とは言えないのではないかと議論されることがあります。
そんな中で宮崎先生は、もちろん持続性も大切だけれども、持続性を前提としない一回性を改めて見直してもいいのではないかと主張されました。
宮崎先生は、SUPプロジェクトを紹介してくださいました。
(SUPってこんなやつですね。マリンスポーツの一種↓)
頚髄損傷のある方でも海の上に行ってみる!やってみたいを支援する!
世間的に無謀に思えることでもやってみる!やってみてるのが宮崎先生方の取り組みです。
“やってみたい”が集まるとワクワクが広がっていく。そして人と人との笑顔がつながっていく!そういった想いを持って一回性を大切にしていると話されていました。
宮崎先生の取り組みをきいて、一回性を経験するからこそ感動性が動かされて、自ら良い生活を模索していくきっかけにもなり得るんだなと思いました。
“対象者がやってみたい!って言ったからやってみました”といった介入は昨今では「それで対象者はどう良くなったの?何か良くなったところあるの?」と批判の的になることが多いような気がしています。
でも、ワクワクの広がりや人とのつながりに結びつくような一回性はとても有意義な経験になると考えることができました。
未来に結びつくような一回性を大切にしていきたいですね。
おわりに
本記事では、OBP×RecoveryのPREセミナーに関するまとめと感想を示しました。
宮崎先生方の取り組みに関してはいねいぶるを参照することをオススメします。ブログやFacebookも定期的にアップされていますね!
また、OTジャーナルにも特集記事が報告されていますので、ぜひご一読を!

宮崎先生の講演を聴いて、下記3点を特に大切にしていきたいなと思いました。
- 誰でも、自分と同じ部分もあるし違う部分もある
- “何が問題か”ではなく“何が必要か”を考える
- 持続性を前提としない一回性
記事を最後までお読みいただきありがとうございました。
また、訪ねてくださると嬉しいです。
では、また。