【リカバリーって?】作業療法士に求められること

作業療法
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こんにちは、金平です。

この記事では、2019年7月21日に開催されたOBP×Recoveryの大橋秀行先生と当事者による講演のまとめと感想を示します。

テーマは、「意味のある作業の実現とリカバリー」であり、大橋先生と当事者のお話を通してリカバリーについて考えていく機会になりました。

講演で特に印象に残った点を先に示しますと、それは下記のとおりです。

  • 大橋先生「リカバリーは右肩上がりとは限らない。上に行ったり下に行ったり、乱気流に飲まれながらも自分の操縦桿を握ることだと思う」
  • 当事者「(精神科の入院)OTはクソつまんなかった。OTよりも自分で自分の生活を回したほうがよかった。入院中は自分にとってよかろうと思うことをやった。」

特に、当事者の言葉は刺激的であり、精神科OTは本当に再考されなければならないと強く感じました。そして当事者の方は、“精神科の入院作業療法はこんな役割があったらいいのでは?”といったたくさんのヒントを与えてくださいました。

リカバリーとは?

リカバリーについて、様々な人物や機関が定義していることを紹介してくださいました。

その上で、簡単に説明するならば、「リカバリーとは、自分の人生の回復自尊心の回復。」といったところでしょうかとお話してくださいました。

さらに、様々なリカバリーの定義の報告を挙げながら、「リカバリーは右肩上がりとは限らない。上に行ったり下に行ったり、乱気流に飲まれながらも自分の操縦桿を握ることだと思う」と本質的な思索を話してくださいました。

筆者の私は、リカバリーときくと、回復や復活といったマイナス部分からプラス方向への右肩上がりを連想させていましたが、それだけじゃないんだと考えることができました。人がふつうに生きるように、落ち込むこともあれば元気になることもある、そのようにして浮き沈みがありながらも、自己主導で、自分の操縦桿を握っていくことが大切であろうと考えることができました。

意味のある作業の実現

リカバリー志向には、意味のある作業の実現も必要であることを話してくださいました。

なお、“意味のある作業”は、2011年の日本作業療法学会以降に全国的に広がりをみせています。それは、大橋先生が2011年の大会長を務められており、大会テーマを「意味のある作業の実現」としたことが大きく影響しているようです。

大会テーマとなったこともあり、その後の学会演題や作業療法のキーワードとして、“意味のある作業”はさらに広がりをみせたようです。

大橋先生は、意味のある作業の実現のためには、“リアルオキュペーションを考えなければいけないのではないか”とキーワードを示してくださいました。

過去の臨床から、本人にとって必要な作業を提供したら退院できた事例を紹介してくださり、実際の地域社会に触れること、実際の地域社会にあるものを提供することの大切さを教えてくださいました。

そのお話を聞き筆者は、病院内だけ、施設内だけで行う作業にどのような意味があるのか改めて考えなければならないと思いましたし、それは本当に対象者にとって良い作業になっているのか吟味しなければならないと感じることができました。

病院内・施設内だからこそ提供できる・活きる作業もあると思いますが、そこに実際の地域社会にあるものをどのように混ぜ込んでいくかが、今後の精神科OTの課題であるように感じました(過去から現在まで続く課題でもあると思いますが)。

できるだけリアルオキュペーションを提供しながらの作業療法がリカバリー志向に必要であると考えることができました。

当事者のお話から

OTはクソつまんなかった

当事者の方は参加した精神領域の作業療法士に対して、真摯に向き合うべき課題を残してくださいました。

過去の入院経験を振り返り、「(精神科の入院)OTはクソつまんなかった」と発した瞬間に会場には笑いが起きました。笑

当事者の方は、入院しながらも自分で生活を構築できる方であり、レクや手芸をする作業療法に何の意味があるのかわからなかったと話してくださいました。「OTよりも自分で自分の生活を回したほうがよかった。入院中は自分にとってよかろうと思うことをやった。」と話しており、自分で作業を構築させていたようです。

作業療法士が何をする人なのかわからなかったとも話してくださいました。

「作業療法士は、一緒に何かをしてくれる人。暇つぶしに付き合ってくれる人」と入院時は認識していたと述べた上で、作業療法士のメリットや、このような在り方であればいいのではないかとヒントを話してくださいました。

作業療法の時間があるから、作業療法士は必ず会える人

まず、入院していて感じた作業療法士のメリットとして「作業療法士は必ず会える人。会えることが保証されている人」であることを挙げられていました。

“医師は回診時程度の短時間しか会えず、精神保健福祉士はなんだかスタッフルームに籠っていることが多い。看護師は忙しそうで呼び止めづらい。でも、作業療法士は、作業療法の時間になれば必ず会える人だった”と話してくださいました。

当事者のお話をきいて、必ず会えるメリットをどのように活かしていくかが重要であると考えることができました。そして、作業療法士側のスタンスとしても多職種とすみ分けて、“忙しそうじゃないからのんびりと相談できそうな人“、“いつも会えてなんだか自分に関心も持ってもらえる人”であることが大切かと感じました。

なんかいる人から意味のある人へ

作業療法士への提案として、「なんかいる人ではなくて、意味のある人になれば良いと思う」と話してくださいました。

“作業療法士はこんな風に活用できる”といったことをもっと患者目線で考えることが必要であろうとのことでした。

「創造的な回復を提案してくれたり、いくつかの回復の道筋や回復過程の予想を教えてくれたり、作戦会議してくれるようなクリエイターだったら面白い」と話してくださいました。

当事者のお話をきいて、精神科の作業療法士は専門性を発信していくことが本当に大切であると感じました。手芸屋さん、ものづくり屋さん、レク屋さんとしてなんかいる人といった認識が強いのが現状であるように感じます。ですので、どのように回復していくかの作戦会議をなおざりにしてはいけないと思いました。そして、何よりも患者さんにとって意味のある人であること、これが大切と思いました。

おわりに

本記事では、リカバリーと作業療法士に求められることについてまとめました。

リカバリーは、(大橋先生)「右肩上がりとは限らない。上に行ったり下に行ったり、乱気流に飲まれながらも自分の操縦桿を握ることだと思う」

作業療法士に求められることは、(当事者)「作戦会議してくれる人」「なんかいる人ではなくて、患者にとって意味のある人になる」

リカバリー志向には、患者にとって意味のある作業の実現が必要であり、作業療法士は何ができる専門家なのかを示し続けていかなければならないと強く感じました。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

では、また。

 

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